最近よく耳にする「ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)」。
ロコモとは、加齢や生活習慣の乱れにより、運動機能が低下し、
介護が必要な状態またその可能性が高いことを指します。
「高齢者の問題」と思われがちですが、
実は20代からの過ごし方で大きく影響されてきます。
ロコモへの入り口「サルコペニア」
人間の筋肉量は、個人差はありますが20歳を境に徐々に減少し始めます。
その減少速度は、加齢に伴ってどんどん加速し、
60歳を過ぎると年間で5%もの筋肉量が減少する例もみられると言います。
このように、加齢によって体内の筋肉量が著しく減少する現象を「サルコペニア」と呼びます。
ギリシア語で「サルコ」は「筋肉」、「ぺニア」は「減少」を意味しています。
アメリカではサルコペニアが健康リスクのトップ5の1つとして認定されているため、
予防や対策にはとても高い関心が寄せられています。
では、なぜサルコペニアは起こるのでしょうか。
それは、加齢と共にタンパク質による筋肉の合成と分解のバランスが崩れるからです。
人間は一日の間に筋肉の合成と分解を繰り返しています。
成長期では、この合成と分解のバランスが合成優位でプラスのため、
食事から十分な量のタンパク質を摂取することによって筋肉は増加します。
ところが、歳を重ねていくと、合成する力が弱まるうえ、
食事量が減少して十分なタンパク質を摂取しなくなるため、筋肉量が減ってしまうのです。
サルコペニアが進行すると、日常生活すら困難になる危険性があります。
ロコモとサルコペニアの違い
サルコペニアは加齢・疾病・運動不足・栄養不良などによって
骨格筋量の減少に伴う筋力低下あるいは歩行機能の低下を指します。
一方、ロコモとは、加齢によって筋肉、骨、関節等の
運動器の部位に支障をきたし、日常生活が困難になったり、
要介護状態や要介護の危険性増えたり、寝たきりになったりする現象を指します。
つまり、ロコモが運動器全般の症状を含むのに対し、
サルコペニアはその運動器の中でも筋肉と筋力、
歩行機能に特化した症状を指していることになります。
サルコペニアが起きているということは、
同時にロコモへの負のスパイラルが始まっているとも言えるのです。
メタボより怖い「サルコペニア肥満」
筋肉はエネルギーをたくさん使うところですので、筋肉量が減れば、
使われずに余ったエネルギーは脂肪に変わって体に溜まりやすくなります。
それは、体形や体重が若いころとあまり変わらない人でも例外ではありません。
BMI(肥満指数)が標準であっても、体の断層画像などで調べると、
筋肉だった部分が脂肪に置き換わっている人が意外に多く見受けられます。
この状態を「サルコペニア肥満」といいます。
ただでさえ加齢とともに筋肉が減りやすいうえに、
普段あまり体を動かさない生活を続けていれば、「サルコペニア」が進みやすくなります。
そうなると動くのがますますおっくうになり、
脂肪も溜まって「サルコペニア肥満」が進行するという悪循環に陥ってしまいます。
脂肪が増えると、脂肪細胞からは動脈硬化や様々な生活習慣病の原因となる
悪玉物質が分泌されるため、知らずしらずのうちに
高血圧や糖尿病などのリスクを高めている可能性があります。
実際に「サルコペニア肥満」は、メタボよりも、
生活習慣病のリスクが高くなることが最近の研究調査で明らかになってきています。
サルコペニア肥満チェック
・BMI(体重kg÷身長m²)が25以上
・筋肉率(筋肉量kg÷体重kg×100)が22%以下
この2つに当てはまるとサルコペニア肥満の可能性は大です。
筋肉率は体組成計で計ることができますが、
お持ちでない方でも簡単にチェックすることができます。
・手を胸の前で組んだ状態で椅子に座った後、片足だけで立ちあがる
・片足立ちの状態のままで靴下をはく
・片足で立った状態で60秒間キープする
上記の3つの動作のうち1つでも出来なかった場合は、
サルコペニア肥満あるいはその予備軍の可能性があります。
もっとも効果的なサルコペニア対策は「運動」
日常生活で取り組めるサルコペニア対策として、
必要な筋肉を取り戻し、余分な脂肪を落とすことができる
運動はもっとも手軽で効果的な方法となります。
運動方法も多種多様ありますが、
生活リズムに合わせて無理なく継続的に行うことが大事です。
自分でしっかり管理ができる→5年間毎日「片足立ち」と「スクワット」をしましょう。
そもそもこれができる方は元々サルコペニアとは無縁と思われますが…
自分じゃ管理できない→ジムでピラティス等の「スロートレーニング」をしましょう。
期間や頻度については先生によって違うので聞いてみてください。
自分じゃ管理できないし時間もない→30分間寝るだけの「楽トレ」をしましょう。
家事や仕事で疲れている方も無理なく続けることができます。
歳を重ねても日々を楽しく過ごすために、
今のうちから良い習慣を身につけましょうね。
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